日本の職人のこだわり【vol,1】
ものづくりの集団「waji」の職人向けプロダクトライン「aruci」のカメラマンが「日本の職人のこだわり」をテーマに各地の魅力的な職人を直撃、紹介していくシリーズ第1弾。
今回は、大阪市北区で「ヘアサロン」「飲食」「アパレル」事業を展開する馬渡氏に話を聞いてきた。リピーターの多さと、スタッフが口を揃えて「働きやすい」という、その秘訣を探る。
人物紹介
馬渡次郎
23歳という異例の早さで独立を果たし、2023年現在、大阪市北区で「ヘアサロン」「飲食」「アパレル」事業を展開する
23歳にして独立
ーーーーインタビュアー(:以下略)
美容師の独立の平均年齢は30歳前後と言われていますが、23歳という早さで独立された経緯を教えてください。
馬渡氏(:以下敬称略)
キャリアのスタートは、高卒で美容室勤めをしながら通信制で理容免許取ってスタイリストになりました。そこで2年ぐらい働いた頃に、大阪で新しくお店やるっていう人がいてそこに「店長できてくれ」という話が来たんですが、蓋を開けてみたら、聞いていた内容と全然違って、出資者も別で….という複雑な状況でした。結局その話自体が白紙になって、店潰すってなったんですけど。その店を買い取ってくれという話になって、そこのオーナーの借金を肩代わりして独立しました。
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23歳にして借金を肩代わりして独立…..不安や怖さはありませんでしたか?
馬渡
若かったんで、不安より「自分のお店持てる」というワクワクしかなかったですね。大変なこともありましたけど笑
多角経営
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ヘアサロンだけでなく、飲食やアパレル事業を始められた経緯を教えてください。
馬渡
5年ぐらいサロンだけ経営してたんですが、結構夜遅くまで営業したので仕事帰りの人に「コーヒー出すのもおもんないやろ」っていうので、缶ビールを出してて、その派生で月1回立食パーティーみたいなものを店でやるようになりました。それが好評だったので、飲食もやることにしました。
お客さんの声が後押しをしてくれたというのもありますし、そもそも美容師になる前に、アパレル行くか、飲食行くか、美容師なるかっていうのを迷ってたんですけど、こうなったら全部やろうと思いました。
仲間(スタッフ)
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全てを起動に乗せるのは相当大変だったと思いますが、不安は感じなかったのでしょうか?
馬渡
飲食やアパレルを始めようとなった時の美容室のスタッフが飲食やアパレルの経験があったので「じゃあもういけるやん」ってなって始めました。
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経験者がいたらいけると思えるものですか!?
馬渡
ウチのスタッフは100%お客さんから入社していて、corsairのことが好きでいてくれているので、本当に信頼していて美容師としての技術面以外は全く口出ししたことがないんです。信頼と勢いです。
仕事においてのこだわり
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「ヘアサロン」「飲食」「アパレル」に共通する仕事におけるこだわりを教えてください。
馬渡
理想のお客さんと言ったら変ですけど、こんなライフスタイルを送ってほしいという1つのイメージがあって「ストレスフリー」で「ラフ」に「遊ぶように暮らしてほしい」と思っていて、髪の毛に関して言うと、毎日のセットに時間もかけて欲しくない。ガサッと適当にセットしても、それがかっこいいっていう感じにしたいので、それを実現するにはカットの技術が高くないと実現できないので、技術に関しては妥協してないです。
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スタッフの皆さんが「働きやすい」と口を揃えて仰っていましたが、職場の環境づくりで心掛けていることはありますか?
馬渡
「ストレスフリーなライフスタイル」とつながりますが、働くスタッフにもそれは思っていて、技術面以外のことで口出しすることは全くないですし。僕こだわりがないんだと思います。こだわりのないことにこだわっています笑。あとは、自分の機嫌の振れ幅がないようにしています。
世界観
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こだわりがないとおっしゃいますが、instagramの作品や内装など端々からこだわりを感じます。
馬渡
いろんな意見価値観やセンスを取り入れるようにはしていて、映画、音楽、作家さんの作品などは国内外問わず触れる様にしています。
内装は、僕が結婚指輪を作るときにお願いしたmoi.toi.(モワトワ)さんっていう作家さんの紹介で、羽多野渉さんっていう和紙で作品を作られる作家さんを紹介してもらって、その方と一緒に仕事している淡路島にギャラリーのあるHIRAMATSUGUMIさんにお願いしたんですけど、その三人ともすごくセンスが良くて、そうやって自分の好きな作品を作る人の繋がりでいろんなセンスを吸収して良いものにたくさん触れる様にしています。
いろんなものに触れつつも、最終的に自分の好きな世界観でアウトプットするように心掛けています。
軸となるサロンの強み
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軸となるサロンの強みを教えてください。
馬渡
サロンで言ったら、めちゃめちゃパーマが強い店ではあるんですよ。普通の店とはロット(パーマの時に髪を巻く道具)の太さが全然違ってすごい細かいものを使っていて、薬もすごい優しいやつ使うのでブリーチしている方にも縮毛してる人にも当てれるし、カラーと同時にもできるしっていうのと、細かく根元から当てるので持ちもいい。それが自然と口コミで評判になって、より意識をしていった感じです。
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パーマ目当てのお客さんが多いんですか?
馬渡
そうですね。普通の美容室と比べたら相当多いと思います。何回かパーマの売上げがカラーの売り上げを抜いたことがあるぐらいです。普通はカラーの方が多いと思います。髪が傷みすぎていて、2店舗3店舗断られましたっていう人が来てくださって喜んでくれています。
リピーターの多さの秘密
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リピート率がとても高いそうですが、秘訣はなんですか?
馬渡
第一はもちろん技術ですけど、あとは接客ですかね?やっぱり「ストレスフリー」というのが1つのテーマなので、なるべく自然体。人や立場によって態度を変えずに接するようにはしています。僕たちも「ストレスフリー」お客さんも「ストレスフリー」でいれるようにしています。
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isntagramや内装のカッコ良さと、馬渡さん含めスタッフの皆さんのアットホームな人柄のギャップに驚きました。SNSなどで発信されているコンテンツは洗練されていて、敷居が高い印象を受けたのですが、アットホーム感はあえて出さないようにしているのでしょうか?
馬渡
空間の居心地の良さっていうのは、あくまでもお客さんが感じてくださることなので「仲良くしてます」って言う事ほど嘘くさいものはないですし、あくまでも私たちは職人なので「かっこいいもの」をつくりたいという気持ちが根底にあります。なので実際に足を運んでいただいて感じていただけたら嬉しいです。
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私も、この記事を読んでくださっている方に「ヘアサロン」「飲食」「アパレル」の世界観と、スタッフさんの人柄のギャップを味わってほしいなと思いました。ありがとうございました。
馬渡
ありがとうございます。
是非お気軽にお越しください。
あとがき
連載第1弾にして「こだわりあんまないんですよ笑」と言われた時には、どうしようかと思ったが、その言葉とは裏腹に馬渡氏が作り上げる空間と提供するサービスの全てにこだわりを感じた。
話の中で馬渡氏が大事にしている「ストレスフリー」というコンセプトの1点で全てが繋がったように思う。一見苦境に見えるような場面でも楽しむ姿勢を忘れない人柄から学ぶものは多い。
提供するサービスに込められたこだわりと、自然体な接客とのギャップを目の当たりにし、肌で感じてリピーターが多いという話にうなづける。
良いものや、他人の意見に対して寛容であるというのは難しく、寛容でありながら軸をぶらさずに糧にしていくのはもっと難しい。クリエイターとしても身の引き締まる思いだ。
aruciの製品にいて
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aruciの製品について感想をお願いします。
馬渡
今日のインタビューでも話させていただいたように「ストレスフリー」をすごく大事にしていて、それで言うとaruciの製品は体への負担が本当に少ないと感じました。
本革のエプロン(ウォッシャブルレザーエプロン)も、本革なのが信じられないくらい軽いですし、aruciのエプロンは裾が袴(ハカマ)の形になっているので椅子に座ったり段差を登っても突っ張ることがないし、革なのに水に強いというのは水を使う職人のことを本当に考えて作っているなという印象です。